2016年6月20日月曜日

読書メモ:"幸せな結婚"とは

0.導入

"幸せな結婚をしたいあなたへ"  岩月謙司著 新潮文庫出版(2003)を読んだ.
 きっかけはラボの先輩からこの本を勧められたのだがあいにく貸出中だったため,本棚にあったものを適当に借りたのである.(こうして書いてみるとすごく残念な理由だ)

1.紹介

著者である岩月さんは出版当時香川大学教育学部教授とのことをこの本で知った.
wikiを読むと,出版後はなかなか香ばしい経歴をたどることになったようである.
(ちなみにこの日記を書きだすまでこの経歴のことは知らなかった.)
 
次に,この本のカバー装画は倉田真由美さんである.
私は彼女の漫画を読んだことはないが,西原理恵子さんの"人生一年生"(だったかなあ)という漫画にて,寄稿しているのは読んだことがある.
確か倉田真由美さんから漫画を通して西原理恵子さんに「「賭け麻雀をしましょう」と提案しているのだが,その賭ける対象が「お金はおもしろくないので,負けた方がもう一人子供を産みましょう!」という凄まじい挑発をしていた気がする.

とりあえずとんでもない組み合わせの二人である.

2.内容

2.1.興味深かった内容

例えばこんな記載がある.
「劣等感の強い女性は見下せる男性相手に恋をする」 ,その結論に対して色々と書いているのだがなかなか興味深かった.
著者曰くダメなところがある男性だと,その男性は恋愛が上手でない女性にとって途端に「可愛い小さい男の子」になるため,男性性を感じない生き物となるそうだ.矛盾しているようであるが,その女性においてその男性に対する"男性不信"が消えて付き合えることが可能になると筆者は指摘している.
そしてその女性は,その「ダメな男性」に何かをしてあげたくなるので,男性でありながら男性性を感じない恋人に対してアレコレすることができる.しかしその一方で,男性が自信満々であったり楽しそうであったりすると,途端に愛せなくなる.といった記載があった. そして筆者はその関係性に対して「真っ当な恋愛ではないのでとっとと別れなさい」とバッサリ切り捨てている.

もう一つ興味深かった点として,全うな恋愛ができないのは両親から正しい愛を受け取れなかったからであるという主張を持って論を進めている.
母が娘に対して嫉妬を覚えているがために,知らず知らずのうちに呪いをかけられて「幸せでない選択を続ける」ようになる人間が一定数いる,「愛してくれなかった親に対して,この例のように復讐のごとくつまらない男性とセックスする」といった話が紹介される.
    
この本は終始このような論調で続くのだが,特に統計的な指標も心理実験等を行った記載は全くない.それにも関わらず,妙な説得感と読みやすさ(文章の洗練度)がある.   

2.2.全体的な話

とにかくこの本全体,やたらと「セックス」という単語が使われすぎである.
ひどいところだと見開き2Pで誇張抜きで30回ほど出てくるので,ゲシュタルト崩壊を起こしかけたために最後のQ&Aはいくつか読み飛ばした.

筆者は"「いい恋愛」なら 「いいセックス」ができているはず"という説を終始主張し,「この事実が受け入れられないなら,貴方は両親から全うな愛を受け取っていない現実を受け入れていないだけ.」といった具合に,支持しない読者を痛烈に批判している.

また恋愛のみならず,本の中ではいわゆる"毒親"の存在が,本人の考え方ならびに行動に関して,具体例を挙げてこういった悪影響を起こすことがある.それらに屈しないためにはとにかく人生を楽しめという,そういったメッセージが随所に散らばっている.(そのへんに関しては概ね納得できる)

ここからだけでも率直に書くと,タイトルにある「幸せな結婚」とはだいぶ話のすり替えが起きている.
ただ繰り返すと(当時は)大学教授という役職ゆえか,洗練された(伝わりやすい)言い回しというものを心得ているのか読みやすさは抜群である.

3.総評

幸せな結婚をするためにはいいパートナーを選べ,そのためにはいい恋愛(セックス)をしろ,いい恋愛をするためには人生を楽しむことが大事である,という非常にわかりやすい内容ではあった.

恋愛結婚をしたいと思う男女に関しては,自身ならびにパートナーの精神構造を手っ取り早く理解(または振り返り)するのに少しは役立つ可能性があるとは思う.

ただ個人的には眉唾物の内容もいくつか感じられた.
一つは,ほとんどがデータもなしに筆者の主観のみで語られる.そのため一種の宗教性のような雰囲気すら文章から感じられる.

またこの筆者は結婚において,恋愛を主眼に置きすぎているのである.
それは悪いこととは言わないが,筆者は全うな愛を我が子に育てられない親は親になるべきでなかったと親を批判している.しかしその親が"恋愛を主眼に置いていたからこそ,子に対して全うな愛情を注げなかった"という可能性を排除して論じている部分が気になった.結婚をしたことで築ける家庭に関して,あまりにも触れられていなさすぎるのだ.
幸せな恋愛結婚によってできた夫婦は幸せかもしれないが,果たしてその子供は本当に幸せなのだろうか.
そう感じざるを得ないのは,この本が物理データでなくあくまでも著者が見聞きした話と研究した内容を精査した上での論調で進むのが,一因と考えざるを得なかった.(逆ももちろんあるでしょうが.)

とりあえず「もしかして私の親は毒親なんだろうか。だから全うな恋愛ができないのかな」と疑心を抱えている人にはおすすめかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。